IGEM:Kyoto/2010/project
From OpenWetWare
introduction
Cell Lysisの必要性
- Cell Lysisとは、「細胞が溶ける」という現象です。
- λファージ由来のLysis cassetteという遺伝子を発現させることで、大腸菌の細胞壁が溶けて中身が放出されます。この現象は、
- 大腸菌に作らせた有用な物質(薬物、香り、色素など)を、特定の環境下で自動的に放出させる。
- 役目を終えたら自殺することで、組み換え生物によるバイオハザードを防ぐ、細胞死機構として。
- 様々に活用できます。
- そのためCell Lysisを自在に制御する機構は非常に応用性が広く、遺伝子工学の発展に重要な役割をもつと考えられます。
Lysis cassetteの機構
- Lysis cassetteという遺伝子のセットからは、主にホリンとエンドライシンというタンパク質が合成されます。
- ホリンは細胞膜上に集まって穴を形成し、その穴を通り抜けてエンドライシンが、細胞壁(を支えるペプチドグリカン)を破壊します。その結果、浸透圧によって細胞膜が破裂してCell Lysisが起こります。
Cell Lysisの機能評価
- 以上のように細胞死機構は重要なものなので、当然「cell Lysis」のパーツは過去のiGEMチームによっていくつか既に作られていました。しかし、パーツとして使いやすさを向上するためには、定量的な機能評価が大切です。
- どれぐらいの働きをするのか?つまり、パーツを組み込んだ大腸菌を殺せるか(溶かせるか)?
- ということを「プロモーター活性」で表すことにしました。
プロモーター活性とは?
- 遺伝子の発現はDNA→mRNA→タンパク質 という順に起こります。RNAポリメラーゼがプロモーター配列こ結合して、DNA上をスライドしながら遺伝情報をmRNAとしてとりだします(転写)。このmRNAがタンパク質に変換(翻訳)されて、そのタンパク質が様々な機能を担います。
- プロモーター活性」とは、「そのプロモーターのRNAポリメラーゼ結合できる強さ」です。
- 大腸菌では「DNA→mRNA:転写」の段階で遺伝子の発現を制御しているので、目的の遺伝子が働くかどうかは、このプロモーター活性が重要になります。
- プロモーターの中には、特定の環境や物質に応じてプロモーター活性が上がるものが多種多様に存在しています。このようなプロモーターのパーツも色々開発されています。
- これらとLysis cassetteを組み合わせることによって、様々な条件下でCell Lysisを誘導することが可能になりますが、どんなプロモーターでも細胞死を起こせるほどLysis cassetteを発現させることができる、というわけではないはずです。
- どれぐらいプロモーター活性があればLysis cassetteが働くのかを解析しました。
結果
Lysisbox
- さらに汎用性のある細胞死機構をめざしてLysisboxを考えました。
- これはLysis cassetteと、Lysis cassetteと拮抗的に作用してCell Lysisを阻害するAnti-Lysis遺伝子の発現をそれぞれ制御して、どんなプロモーターでもCell Lysisを誘導できるしくみです。